売上は過去最高。なのに資金繰りは苦しい
決算は黒字、売上は前年比120%。それなのに来月の支払いを考えると胃が痛い。中小企業の経営者なら一度は経験する状況です。
成長と資金繰りの苦しさは矛盾しません。むしろ成長期こそ、キャッシュは枯れやすい。
売上が伸びている時期の資金繰りは、停滞期よりも危険になることがあります。仕入れや人件費の先払いが膨らむのに、回収は追いつかない。成長に殺される、という言葉は誇張ではありません。
売上の伸びは祝祭になりやすい。社員も喜ぶ、銀行も評価する、自分も達成感を得ます。しかし祝祭の裏側で、現金は静かに減っていることがあります。
黒字倒産という言葉が意味すること
会計上の利益と、銀行口座にある現金は別ものです。売掛金は売上に計上されるが、入金は数か月後。仕入れや人件費は今すぐ出ていきます。この時間差が大きくなるほど、会社は資金的に薄くなります。
黒字倒産という言葉は、経営の常識として知っているはずなのに、自分ごととして感じるのは難しい。
決算書だけ見ていると黒字に見えます。しかし通帳を見ると残高が薄い。この乖離が起きている経営者は、まず資金繰り表の精度を上げる必要があります。
資金繰りを見るタイミングが月一回の経営者と、週一回の経営者では、判断のスピードが違います。週一回見ていれば、来月の不足は今動けば防げる。
数字を見るタイミングが、結果を変える
資金繰り表を月末に見る経営者と、毎週見る経営者では、判断のスピードが違います。週単位で見えていれば、来月の不足は今動けば防げる。月次で見ていると、気づいたときには手遅れになります。
頻度を上げるだけで、経営判断の自由度は変わります。
週次で資金繰りを把握している経営者は、月次の経営者より3か月先を見ています。見える時間軸が長いほど、選択肢は増えます。
回収サイクルを1週間早めるだけで、運転資金の必要額は大きく変わります。これは交渉さえできれば、お金をかけずに実現できる改善です。
「キャッシュが減っていく感覚を知らない経営は、本当の経営ではありません。」
— ある経営者の言葉
売上を追うか、回収を追うか
売上を追う組織と、回収を追う組織では、文化が違ってきます。前者は受注を称え、後者は入金を称える。どちらが偉いという話ではありません。中小企業では、両方を両立させないと続かない。
回収条件の交渉、与信管理、滞納の早期発見。地味だが効きます。
回収条件の交渉は気まずい。しかし気まずさを避けて条件を放置すると、そのツケはすべて経営者の不眠に変わります。
キャッシュが薄くなると、選択肢が消えます。選択肢のない経営は、感情的な経営になります。だから現金は心の余裕でもあります。
キャッシュフローの数字の奥にある問い
資金繰りが苦しいとき、経営者が本当に向き合うべきは数字そのものではありません。「自分は何を恐れて、いつまで動かずにいるのか」という問いです。
値上げ、与信締め、不採算の整理。やるべきと分かっていることを先送りしているとき、キャッシュは静かに減っていきます。
キャッシュを守る習慣
キャッシュフローを守るために、特別なツールは必要ない。Excelで十分です。大事なのは、毎週決まった曜日に必ず開く、という習慣です。
数字を週次で見るようになると、月初の不安が消えます。来月の現金が予測できているからです。予測できる経営は、感情的な経営から解放される。
そして、苦しいとき何を先送りしてはいけないかが見えてきます。値上げ、与信見直し、不採算撤退。これらは早く動くほどダメージが小さい。