気づいている。でも、触れられない

朝礼のとき、以前より声が小さくなった人がいる。ランチに誘っても断られることが増えた。Slackの返信が、一言だけになった。退勤時間が、少しずつ早くなっている。

経営者は気づいている。従業員のわずかな変化を、驚くほど正確に感じ取っている。しかし、気づいていることと、それに触れられることは全く別の話だ。

「最近どう?」と聞けば、「大丈夫です」と返ってくることは分かっている。踏み込めば、ハラスメントと受け取られるかもしれない。放っておけば、ある日突然「退職したいのですが」と言われる。その繰り返しを、何度も経験してきた。

沈黙の構造

経営者が声をかけられないのは、優しさのせいではない。「聞いたところで、自分に何ができるのか分からない」という無力感があるからだ。

給与を上げればいいのか。業務を減らせばいいのか。それとも、もっと根本的な何か——この会社で働く意味そのものが揺らいでいるのか。答えが見えないから、問いかけること自体を避けてしまう。

経営者と従業員の間には、お互いが気を遣い合うことで生まれる沈黙がある。その沈黙は、善意から始まったはずなのに、いつの間にか組織を蝕んでいく。

「何が起きているか」ではなく「何が起きていないか」

従業員の元気がないとき、多くの経営者は原因を探そうとする。業務量が多いのか、人間関係に問題があるのか、プライベートで何かあったのか。

しかし、本当に見るべきなのは「何が起きているか」ではなく「何が起きていないか」かもしれない。以前はあった雑談がなくなった。新しいアイデアの提案がなくなった。失敗したときの笑いがなくなった。

消えたものの中に、組織の本当の課題が隠れている。そして、それは従業員個人の問題ではなく、組織の構造が生み出しているものであることが多い。

問いを変えてみる

「あの人をどうすればいいか」ではなく、「この組織で、人はどんなときに黙るのか」と問い直してみる。すると、個人の問題に見えていたものが、組織の問題として浮かび上がってくる。

会議で反対意見が出なくなったのはいつからか。新しい提案が減ったのはいつからか。「やらされている」という空気が漂い始めたのはいつからか。

従業員の元気のなさは、個人の体調やモチベーションの問題ではなく、組織が発しているシグナルだ。そのシグナルを、経営者がひとりで抱え込む必要はない。

Sentioが届ける問い

Sentioは、御社のデータや業界の動向を読み取りながら、週に一つの問いを届ける。「直近3ヶ月で、社内から新しい提案は何件ありましたか」「最後に従業員と事業の将来について話したのはいつですか」。

その問いは、従業員を管理するためのものではない。経営者自身が、組織の中で何が起きているのかを感じ取るためのものだ。気づいているのに触れられなかったことに、問いという形で光を当てる。