数字を見るたび、ため息が出る
家賃、人件費、システム費、リース料。月初に支払いが続くと、自由に使える現金がほとんど残らない。固定費は積み上げているうちに、気づけば動かしにくい重さになります。
削るべきだ、という思いと、削れない、という現実のあいだで経営者は揺れる。
固定費は、見えやすい数字なのに、向き合うのが最も心理的に重い数字です。一つひとつに過去の意思決定の重みがあるからです。
固定費を削る議論は、過去の自分を否定する議論にもなります。だから多くの経営者は、削減の話を先送りしたくなります。
固定費は、過去の意思決定の総和
今ある固定費は、すべて過去の経営者の意思決定の結果です。あの時オフィスを広げた。あの時人を採用しました。あの時このシステムを契約しました。一つひとつには理由があった。
今、その理由はまだ生きているか。それを問い直すことが、固定費の見直しの第一歩です。
削減の議論を始めると、経営者は自分の過去の判断を否定するような気持ちになります。だから無意識に話題を避けます。
削減と縮小は混同されがちだが、まったく違います。削減は同じ規模で効率を上げる、縮小は規模そのものを下げます。
削減と縮小は別もの
固定費を削るとき、削減と縮小を混同しないことが大事です。削減は同じ規模で効率を上げる動き、縮小は規模そのものを下げる動きです。
両者が必要なときもあれば、片方だけでいいときもあります。判断を誤ると、必要なものまで失います。
削減と縮小を混同すると、必要なものまで削ってしまいます。同じ規模で効率を上げるのか、規模そのものを下げるのか、最初に決めます。
削る順番を間違えると、消耗だけして何も変わりません。小さな固定費から動かして、勢いをつける方が効きます。
「固定費を削るとき、いちばん怖かったのは、自分の判断を否定することでした。」
— ある経営者の言葉
削るより前に、収益構造を疑う
固定費が重く感じる本当の理由は、固定費そのものではなく、それに見合う収益が出ていないことかもしれません。
削減の前に、値上げや単価アップ、不採算事業の整理を検討する余地はあるか。
固定費の重さの本当の正体は、収益とのバランスです。固定費が重いのではなく、収益が薄いのだ、という見方もできます。
重さを感じたら、削ることより先に「自分は何を続けたいのか」を問います。答えが見えれば、削るべきものが見えます。
重さを感じたときの問い
固定費の重さを感じたら、「何を削るか」より先に「自分は何を続けたいか」を問いたい。続けたいものが明確なら、その邪魔をしているものは何か、自然に見えてきます。
削減は手段です。目的を見失った削減は、組織を弱くします。
固定費を見直す順番
固定費を見直す順番は、家賃や人件費のような大物からではありません。サブスクリプション、不要な保険、使われていないツール、そういった小さな固定費からです。
小さなものを整理すると、見直しの感覚と勢いがつく。その勢いで、大きな固定費にも向き合えるようになります。
順番を間違えると、大物から削ろうとして消耗し、結局何も動かないという結果になりがちです。