人が増えたのに、何も変わらない

「あと2人いれば回る」「営業を1人入れれば売上が伸びる」「管理部門に人を入れれば自分が楽になる」。そう考えて採用に踏み切った経営者は多い。実際に人が入った。しかし3ヶ月経っても、半年経っても、期待していた変化が起きない。

むしろ、教育コストが増え、既存メンバーの負担が一時的に重くなり、組織の動きが鈍くなったようにすら感じる。「採用は間違いだったのか」と自問する夜がある。

だが、多くの場合、問題は採用そのものにあるのではない。人が増えても組織が動かないのは、組織の構造のどこかに、人が機能しない理由が潜んでいるからだ。

役割が曖昧なまま、人だけが増えている

従業員が10名を超えたあたりから、「誰が何を決めるのか」が曖昧になり始める。創業期は社長がすべてを決めていた。5人のときは、なんとなく役割が分かれていた。しかし15人、20人と増えるにつれて、判断の空白地帯が生まれる。

新しく入った人は、その空白地帯に放り込まれる。「自分で考えて動いてほしい」と言われるが、何を基準に判断すればいいのかわからない。結局、社長に確認を取るか、何もしないで待つか、どちらかになる。

組織が動かない原因は、人が足りないことではなく、人が動くための「判断の地図」が存在しないことにある。採用で解決できる問題と、構造で解決すべき問題は、まったく別のものだ。

これは能力の問題ではない。優秀な人材を採用しても、判断基準が共有されていなければ、その人は力を発揮できない。力を発揮できないまま辞めていく人材を見て、「やはり採用が悪かった」と結論づけるのは、本質を見誤っている。

採用の前に問うべきこと

「この人が入ったら、具体的に何がどう変わるのか」。この問いに明確に答えられないまま採用を進めているケースは少なくない。「とにかく人手が足りない」という感覚は本物だとしても、その感覚の裏にある本当の問題は別のところにあるかもしれない。

業務プロセスが非効率なのか。判断のボトルネックが社長自身にあるのか。そもそも、やらなくていい仕事をやり続けているのか。人を増やす前に、こうした問いと向き合う時間を取れている経営者は、実は少ない。

忙しいから採用する。採用したからさらに忙しくなる。この循環の中にいると、立ち止まること自体が難しい。

外からの問いが、構造を見えるようにする

Sentioは、会社のデータを静かに読み取り、経営者に週に一つの問いを届ける。「採用を増やしているのに、一人あたりの売上が下がっている。この構造について、どう考えているか」。そんな問いが届くことがある。

答えを出すのはSentioではない。経営者自身だ。しかし、問いを受け取ることで初めて、見えていなかった構造が見え始める。採用の問題だと思っていたものが、実は権限委譲の問題だったと気づく。人の問題だと思っていたものが、仕組みの問題だったとわかる。

組織を動かすのは、人の数ではなく、問いの質かもしれない。その問いが、毎週届くとしたら、半年後の組織はどう変わっているだろうか。