相談相手はたくさんいる。なのに本当の相談はできない
税理士、弁護士、銀行、コンサル、同業の経営者仲間。経営者の周りには「相談できる人」がリストアップすれば10人はいます。しかしそのリストを眺めて気づく。本当に踏み込んだ相談ができる相手は、その中にいません。
「相談できる」と「本音で話せる」は違います。
「相談できる人がいる」と「本当の相談ができる人がいる」の差は、時間が経つほど大きくなります。表面的な相談だけでは経営者の孤独は埋まらない。
経営者の周りには相談相手が10人いるかもしれません。しかしその10人と本当の意味で本音を交わせるかは別の話です。本当の信頼は数では測れない。
肩書きと信頼は別のもの
肩書きは入り口の信頼を作ります。しかし本当の信頼は、その人の言動が時間をかけて作ります。専門家としての権威があっても、自分の事情を理解していない相手には踏み込めない。
経営者にとっての信頼できる相談相手とは、肩書きではなく「文脈を共有している」相手です。
肩書きで選んだ相談相手は、肩書きの範囲でしか答えてくれない。文脈で選んだ相談相手は、肩書きの外側まで踏み込んでくれる。
信頼できる相談相手の条件を考えるとき、まず「自分が何を相談したいか」を整理することが先です。整理されていれば、ふさわしい相手も見えてきます。
正論を言わない、という条件
経営者が一番疲れるのは、正論で殴ってくる相談相手です。「それは社長としての責任です」「もっと数字を見るべきです」。間違っていません。だからこそ消耗します。
信頼できる相手は、正論より先に「今、何に困っているか」を聞いてくれる。
正論で殴らない、というのは「優しいことを言う」とは違います。耳の痛いことも、相手の状況に寄り添った形で渡せるかどうかです。
相談相手は、答えを持っている人である必要はない。むしろ、答えを急がず、こちらの混乱を整理してくれる人の方が役に立ちます。
「相談したかったのは答えではなく、自分の混乱を整理してくれる存在でした。」
— ある経営者の言葉
利害関係がないことの強さ
税理士は税の話をします。銀行は返済の話をします。コンサルは契約継続の話をします。それぞれの立場があるからこそ、踏み込めない領域もあります。
利害関係のない第三者に話せると、初めて見える景色があります。
利害がない第三者の存在は、経営者にとって贅沢ではなく、必需品に近い。判断の質を保つためのインフラです。
経営者にとって本当に必要な相談相手は、自分の盲点を指摘してくれる人です。同意してくれる人ばかりに囲まれると、判断は鈍る。
結局、必要なのは答えではなく問い
本当に信頼できる相談相手の条件を突き詰めると、「答えを押し付けない」ことに行き着く。経営者は自分で答えを出せます。出せないのは、適切な問いを持てていないからです。
問いを差し出してくれる相手こそが、経営者にとって最も信頼できる存在になります。
相談相手を見つける視点
信頼できる相談相手を探すとき、「すごい人」を探してはいけない。「自分の話をよく聞いてくれる人」を探すべきです。聞いてくれる人は、答えを押し付けない。
同時に、自分の業界と離れた人を一人持っておくと視野が広がる。同業の常識が、別の業界では非常識だったりします。
そして、相談相手を一人に絞る必要はない。テーマごとに違う人を持つほうが、経営者の判断は立体的になります。